シリーズ・先天性遺伝性疾患の診断に役だつ検査・10
遺伝性腎尿細管疾患
伊藤 克己
1
,
川口 洋
1
Katsumi ITO
1
,
Hiroshi KAWAGUCHI
1
1東京女子医科大学腎臓病総合医療センター腎臓小児科学
pp.1192-1199
発行日 1985年10月15日
Published Date 1985/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912694
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
腎の構成単位であるネフロン(nephron)は,解剖・機能的に,糸球体と尿細管に分けることができる.糸球体によって得られた,糸球体濾液(原尿)は,尿細管を通過して,尿として排泄されるまでに,尿細管の各部位において,再吸収や排泄の修飾を受ける(図1).遺伝性腎尿細管疾患とは,先天的に,この物質の再吸収や排泄機能が欠損している病態を示す.尿細管におけるこれらの機能は,尿細管の細胞膜を通して物質が転送(transport)されることによって行われるので,別名,先天性尿細管転送異常とも言われる.本症には,一次性(先天的に膜の転送機能が欠損している)と,二次性(ほかの先天性疾患によって二次的に転送機能障害を生ずる)に分けられる.本疾患群は,主として,ブドウ糖,アミノ酸,リン酸,水,酸(アンモニア,重炭酸)およびこれらの物質の多種吸収・排泄欠損の六種類に分けることができる(表1).以下,その診断,鑑別のための検査方法について述べる.
Copyright © 1985, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.