Japanese
English
特集 IgA腎症のすべて―最新の診断法と治療
治療
小児の免疫治療
Immunosuppressive therapy for childhood IgA nephropathy
島 友子
1
SHIMA Yuko
1
1和歌山県立医科大学小児科
キーワード:
GdIgA1
,
免疫複合体
,
免疫抑制薬
,
ステロイド
Keyword:
GdIgA1
,
免疫複合体
,
免疫抑制薬
,
ステロイド
pp.239-243
発行日 2025年8月25日
Published Date 2025/8/25
DOI https://doi.org/10.24479/kd.0000002000
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はじめに
IgA腎症は,フランスの病理学者Jean Bergerにより「糸球体メサンギウム領域を中心にIgA(IgA1)の優位な沈着を伴うメサンギウム増殖性腎炎」と定義された,世界で最も頻度の高い原発性糸球体腎炎である。いまだ病因の詳細は不明で,糸球体IgAの沈着の程度と組織重症度・腎予後が相関しないことや,尿所見・腎機能に異常を認めない剖検例や移植ドナー腎の一部に糸球体IgA沈着を認める例があることから,本症における糸球体IgA沈着が炎症の原因かどうかについては長年不明であった。近年IgA腎症患者でIgA1ヒンジ部のO型糖鎖修飾異常,特にGalNAcのガラクトース修飾が欠失したgalactose-deficient IgA1(GdIgA1)と,それを含む免疫複合体(immune complex:IC)が血中で増加しており,疾患活動性や予後と相関することが示され,本症における糸球体IgAはGdIgA1が主体できわめて疾患特異性が高いことも証明されている1)。そのため本症の発症病態として,GdIgA1を有するような遺伝的背景(1st hit)に加え,食物,細菌,ウイルス感染などの抗原刺激により活性化されたT細胞が過剰なIgAに対する抗体産生を引き起こし(2nd hit),高分子GdIgA1/ICが形成され(3rd hit),これが糸球体に沈着することにより炎症が惹起される(4th hit),multi-hit仮説が最も有力である2)。

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