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現在,新宿駅の西口ロータリー内にある透析クリニックに来ているが,ビルの7階の階段の踊り場からロータリーが見渡せる。現在,この西口のロータリーから東口の駅ビルのルミネがみえて,昔の旧アルタスタジオまで見渡せる。この風景は,最近みることができるようになった。少し違和感があり,そして数年後にはまたみることができなくなる貴重な風景かと思うと少し感動する。地方の方や,首都圏でも新宿にあまり来る機会のない方は,“はて何のことか?”と思うだろうが,これまで新宿西口には小田急デパートがあり,西口ロータリーから東口側を一望できることなどなかった。現在,新宿西口のロータリーは,新宿駅西口地区開発プロジェクトの一環により大改装工事中で,昭和37年にオープンした小田急デパートは昨年取り壊され,西口から東口が見渡せる状況である。ちなみにこの小田急デパートは令和11年には地上48階・地下5階のビルに生まれ変わり,それだけではなく,ロータリー周辺の老朽化の進んだビルも次々と建築工事がはじまっており,新しいビルに生まれ変わる。いや,ロータリー周辺だけでなく,西新宿の昭和の高度成長期に建てられたビルや家屋はそろそろ建て替えの時期を迎え,この数年で土地ごとどんどん買収され,巨大ビルへと生まれ変わり,西新宿の様相もますます高層ビル化が進んでいる。聞けば,今年は昭和100年らしい。そして戦後80年でもある。戦後から昭和の時代に生まれ,消えていくものは建築物だけでなく,そのほかにもさまざまなものがある。昭和100年だからかもしれないが,“昭和はよかったよね~”とか“昔はよかったね~,なんでも自由で”といった言葉を時々耳にする。テレビでも昭和・平成・令和の違いなどをクローズアップし,“昔はこんなことやってたの⁉”という,令和の世では考えられない昭和の常識を面白おかしく放送している。実際に昔は許されていたことの多くが,現在はコンプライアンスに反するということで許されなくなった。しかし,常識的に考えれば,昔のほうがとんでもないことがまかり通っていて,それをよかったと思う発想自体が危険で古臭い考えともいえる。もっとも,昭和がよかったという発想がそこに基づいていないこともあると思うが,確かに昔より生きにくい世の中になっている側面もあると思う。
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