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1 はじめに
わが国では,透析導入の基準として,平成3年度厚生科学研究腎不全医療研究事業研究により作成された慢性維持透析療法の導入基準(厚生科研基準)1)が長らく使用されてきた。この基準は,血清クレアチニン(Cr)あるいはクレアチニンクリアランス(Ccr)を腎機能の指標とし,臨床症状や日常生活障害度なども加味して点数化し,透析導入判定の一助とするものであり,高齢透析導入患者や心血管合併症などにも配慮した優れた導入基準として評価されてきた。しかしながら,平成3(1991)年からすでに約20年が経過した時点で,透析導入患者の平均年齢が65歳を超え,糖尿病性腎症や腎硬化症などの動脈硬化性血管合併症を有する頻度の高い原疾患の透析導入患者が50%を超えるなど2),透析導入患者の現況は大きく変貌を遂げた。また,透析方法も血液透析,血液濾過透析および腹膜透析は腎代替療法の治療法として進歩しており,それぞれの治療法の特性を十分に認識したうえで,最大限のメリットを享受できる最良の治療開始時期の設定が求められている。さらに,国際的には,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の概念が普及し,腎機能評価法の標準化が進み,諸外国からも透析導入ガイドラインなどが呈示されるようになってきた。このような状況下で,国際比較も可能な透析導入期の残腎機能や尿毒症の予後への影響などに関する新たな知見が報告されている。このように,慢性腎不全の透析導入に関する医学的エビデンスが蓄積されるなかで,わが国の透析導入基準の見直しの必要性が指摘されるようになってきた。そこで,日本透析医学会では,関連学会からの協力も得て,血液透析療法ガイドライン作成ワーキンググループにより,血液透析導入ガイドラインが作成された3)。
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