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特集 病理からせまる腎疾患の病因・病態解明
総論
尿細管間質病変 尿細管円柱の病理診断と鑑別疾患
Pathological diagnosis on renal tubular cast and its differential diagnosis
本間 志功
1
,
坂口 涼子
1
,
城 謙輔
1
HONMA Shiko
1
,
SAKAGUCHI Ryoko
1
,
JOH Kensuke
1
1東京慈恵会医科大学病理学講座
キーワード:
軽鎖円柱
,
ミオグロビン円柱
,
ヘモグロビン円柱
,
ビリルビン円柱
,
硝子円柱
Keyword:
軽鎖円柱
,
ミオグロビン円柱
,
ヘモグロビン円柱
,
ビリルビン円柱
,
硝子円柱
pp.377-382
発行日 2024年9月25日
Published Date 2024/9/25
DOI https://doi.org/10.24479/kd.0000001457
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はじめに
腎生検診断では,糸球体,尿細管間質,血管という腎の3つの構成要素を系統的に観察し,個々の症例における腎障害の機序や病態を推定していく。尿毒素の排泄,電解質の調節,酸塩基平衡,アミノ酸の再吸収を担うという点では,尿細管はそれ自体が腎機能の中心的な役割を果たしているといえる。尿細管の病理形態学的変化は疾患特異的なものが少ないが,尿細管管腔内に円柱形成が目立つことがあり,それ自体あるいはほかの病理組織学的所見とあわせることで,腎機能異常を説明する病理診断上のヒントを与えてくれる場合がある。「円柱腎症(cast nephropathy)」という用語は,多発性骨髄腫に合併する軽鎖円柱腎症(light chain cast nephropathy)ないし骨髄腫腎(myeloma kidney/myeloma cast nephropathy)がもととなった用語であるが,ほかにもさまざまな生体物質を含有する円柱が形成されうる(表)。尿細管円柱の臨床病理学的意義は,まず尿細管管腔内を閉塞させることによる機械的尿流障害(intratubular obstructive nephropathy)1),次に形成された円柱それ自身による尿細管毒性が挙げられる。また,軽鎖円柱が多発性骨髄腫の存在を示唆すること,ミオグロビン円柱が横紋筋融解症を反映すること,ヘモグロビン円柱が血管内溶血を示唆することなど,尿細管円柱の指摘から背景疾患の診断ないし病態の推定に役立つことがある。
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