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はじめに:糸球体係蹄と糸球体内皮細胞の構造と機能を中心に
腎臓の糸球体はメサンギウム細胞,上皮細胞(足細胞)および血管内皮細胞から成り,それらすべてが正常に機能し,血液濾過機構を担っている。糸球体上皮細胞である足細胞から伸びる足突起間に形成されるスリット膜,血管内皮細胞と,足細胞および内皮細胞の細胞外基質として産生されるⅣ型コラーゲンらにより基底膜が作られ,これらにより蛋白尿制御機構が維持されている。糸球体毛細血管の最内側に存在する糸球体血管内皮細胞は,多数の約70 nmほどの小孔(fenestrae)をもつ有窓性の構造をもち(図1),このfenestraeはほかの血管内皮細胞と比較して大きく,比較的均一で線状に並んでおり,隔膜をもたない。血管内皮細胞表面は陰性に荷電したプロテオグリカンから成るglycocalyxで覆われ,チャージバリアとしての濾過障壁機能に加え,補体制御や抗凝固作用などを担っている1,2)。また,糸球体内皮細胞は,その糸球体基底膜を隔てて足細胞と,メサンギウム基質を介してメサンギウム細胞と,それぞれ接しており,それらの相互作用である「細胞間クロストーク」は,正常の糸球体の生理機能に重要であると考えられている2)。代表的な例として,内皮細胞の構造機能維持には,足細胞が産生および細胞外に分泌する血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)が必須であり,これに対する抗体や濃度勾配の不均衡は,内皮細胞の機能障害をきたすことが知られている1,2)。腎臓には,腎動脈からはじまり,葉間動脈,弓状動脈,小葉間動脈,輸入輸出細動脈,糸球体毛細血管から尿細管間質に存在する傍尿細管毛細血管(peritubular capillary:PTC)まで大小さまざまな血管が存在するが,本稿では,糸球体内皮細胞障害について腎病理所見を中心に詳述する。
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