今月の主題 酸化ストレス
話題
血管内皮細胞の酸化LDL受容体LOX-1
沢村 達也
1
Tatsuya SAWAMURA
1
1国立循環器病センター研究所バイオサイエンス部
キーワード:
酸化LDL
,
血管内皮細胞
,
LOX-1
,
動脈硬化
Keyword:
酸化LDL
,
血管内皮細胞
,
LOX-1
,
動脈硬化
pp.297-301
発行日 2001年3月15日
Published Date 2001/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904712
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.はじめに
酸化LDLが動脈硬化の病態生理に重要な役割を果たしているのではないかと考えられるようになって10年以上がたつ.これは動脈硬化巣で特徴的に見られる泡沫細胞形成の過程にLDLよりも何らかの修飾を受けたLDLがマクロファージにより取り込まれることによるらしいという観察と,修飾を受けたLDLとして酸化LDLが実際に生体内に存在し,泡沫細胞の誘導が可能であることから始まった.
一方,近年の一酸化窒素,エンドセリンなどの内皮細胞由来の血管弛緩,収縮因子,IL-8やMCP-1などのケモカイン,セレクチンやVCAM-1, ICAM-1などの細胞接着因子など血管内皮細胞の機能に重要な分子の相次ぐ発見により,血管内皮細胞の血管機能における役割の重要性が注目を浴びるようになってきた.そしてこれらの分子の病態における動態の解析の結果,酸化LDLが内皮細胞の機能変化を引き起こすという点でも重要な因子であることがわかってきた.酸化LDLで誘導される"endothelial dysfunction"と呼ばれる内皮細胞の変化は一酸化窒素の産生低下や各種増殖因子,接着分子の産生亢進などを指し,高脂血症や動脈硬化症下での血管弛緩能の低下や内膜における平滑筋増殖,白血球の血管への接着,侵入などの血管機能変化を導くと考えられている1,2).
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.