Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
Ⅰ カリウム管理
腎臓はカリウム(K)排泄の主要臓器であるため,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者では高カリウム血症を発症しやすい。腎機能が低下した状態では,Kの排泄障害に加え,アシドーシスの合併や,心臓・腎臓の保護薬であるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン阻害薬(renin-angiotensin-aldosterone:RAS阻害薬)やミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(mineralocorticoid receptor antagonist:MRA)の投与により高カリウム血症になりやすいとされている。これまでの観察研究から,血清K値と総死亡との間にU字型関係が認められており(図1)1),また血清K値が5.5mEq/L以上の群で総死亡,心血管疾患の発症リスクが上昇すると報告されている2~4)。日本人を対象としたKashiharaらの観察研究では,CKDステージが上昇するにつれ,高カリウム血症を有する割合が上昇し,CKDステージG3aからG5のいずれのステージにおいても血清K値正常群(3.6~5.0mEq/L)と比較して血清K値5.5~5.9mEq/L,6mEq/L以上の群において3年死亡率が上昇すると示されている1)。さらに英国やスウェーデンの研究でも,血清K値5.5mEq/L以上の群で総死亡のハザード比(hazard ratio:HR)が有意に上昇すると報告されている5,6)。一方低カリウム血症については,PARAGON-HF試験の事後解析において,CKD患者を対象としたサブ解析で血清K値4.0~5.0mEq/Lと比較し,血清K値4.0mEq/L未満で総死亡のHRが1.88(95%信頼区間(confidence interval:CI 1.45-2.43)と有意に高くなると報告している7)。いずれのアウトカムも観察研究から得られた結果であり,血清K値異常と総死亡の因果関係や血清K値を管理することによる予後への影響を直接的に示すものではない。しかし,血清K値5.5mEq/L以上および4.0mEq/L未満においてCKD患者の総死亡,心血管疾患の発症リスクが上昇するとの報告が複数あるため,2023年に改訂されたCKD診療ガイドラインでは「CKD患者の血清K濃度を4.0mEq/L以上5.5mEq/L未満に管理すること」が推奨されている8)。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.