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Ⅰ CKD患者の経腸栄養
経腸栄養は,経口栄養補助食品(oral nutritional supplements:ONS)の有無にかかわらず経口摂取が1日の必要量の少なくとも70%を満たすのに十分でない場合に適応となる1)。経口摂取は可能だが通常の食事だけでは栄養要件を達成できない栄養失調のリスクがある患者には,ONSがよい適応である。慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者においても標準組成栄養剤の使用が検討されるが,電解質異常や水分過剰が懸念される場合に腎不全用栄養剤も考慮する。腎不全症例に用いる経腸栄養剤は,一般に高濃度で,ナトリウム,カリウム,リンが制限されているのが特徴である。代謝的に安定した保存期腎不全患者に対して経腸栄養を施行する場合に,カリウム,リンなどの異常や水負荷の制限などが必要な症例では,たんぱく質と電解質の含有量が制限され,非たんぱく質カロリー/窒素比(non-protein calorie/nitrogen:NPC/N比)が高く設定された経腸栄養剤の使用も検討される。一方,透析患者や持続血液濾過などが施行されている場合には,たんぱく質の投与量を制限する必要はなく,むしろ1.2g/kgBW/日程度の高たんぱくとすべき(表1)2)である。さらに重症疾患合併の際には1.5g/kgBW/日までの増量も検討すべきである3)。安易に腎不全用製剤のみを使用すると,たんぱく質必要量を満たせない場合もあり,成分内容を吟味する必要がある。カリウムやリンなどの電解質異常のため,それら電解質含有量が制限された経腸栄養剤も選択されるが,透析を避けるために必要なたんぱく質量やエネルギー量を減らすことは避けるべきである。透析患者や保存期腎不全患者であるか,また代謝的に安定した状態か,急性疾患を伴う重篤な病態であるかどうかで必要エネルギー量やたんぱく質量が変わるため4),個々の患者に応じて目標エネルギー量やたんぱく質量を設定する必要がある。さらに重症・低栄養患者では栄養投与に伴いリフィーディング症候群(低リン血症,低カリウム血症,低マグネシウム血症などの電解質異常)を呈する可能性もあり,その点でも腎不全用ONSの一律使用は推奨されない5)。
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