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1 病因・病態
抗糸球体基底膜(glomerular basement membrane:GBM)病は,血管炎の国際分類基準であるChapel Hill Consensus Conference(CHCC)で免疫複合体型小型血管炎に分類されている1)。小型血管炎のなかで,GBMに対する自己抗体陽性の血管炎を抗GBM病と呼び,①腎臓限局型の抗GBM腎炎,②肺限局型の抗GBM抗体型肺胞出血,③腎臓と肺の双方を障害する型(以前はGoodpasture症候群に分類されていた)の3つに定義されている。Ⅳ型コラーゲンα3α4α5分子はGBMの主成分であるとともに,尿細管基底膜の一部や肺胞基底膜に局在している。1984年Wieslanderらが抗GBM抗体の対応抗原であるGoodpasture抗原(GP抗原)の存在を初めて明らかにし2),1988年Saus らは2番染色体長腕q35-37にコードされているⅣ型コラーゲンのα3鎖のC末端のNC1ドメイン部分にGP抗原が存在する証明した3)。2010年のPedchenkoらの報告から,多くのGoodpasture症候群ではα3鎖NC1ドメインEA(N末端側17-31位のアミノ酸残基,エピトープA),EB領域(C末端側127-141位のアミノ酸残基,エピトープB)とα5鎖NC1ドメインEA領域を認識する複数種の抗GBM抗体を有し,また一部の症例はα4鎖NC1ドメインを認識する抗GBM抗体をもち,これらのエピトープはhidden antigenのためGoodpasture症候群で産生されるいずれの抗GBM抗体も生体のNC1ドメイン六量体とは結合しないことが明らかとなった(図1)4)。すなわち,疾患の発症には,このNC1ドメイン六量体の分離によるエピトープの露出が必要であることを示唆している。一方,Alport症候群の腎移植症例でのアロ抗GBM抗体は生体内の正常な立体構造のNC1ドメイン六量体と結合可能であり,立体構造上表面に露出しているα5鎖NC1ドメインEA領域を認識し,Goodpasture症候群の抗GBM抗体とは抗原エピトープが異なっていることが知られている。抗原エピトープの露出につながる要因として,細菌やウイルスなどによる感染症,吸入毒性物質(有機溶媒,炭化水素化合物,金属,コカインなど),喫煙などがあげられている。また,患者側の要因として,本症と主要組織適合性遺伝子複合体分子,すなわちヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)との関連が指摘されており,特にHLA-DR15が発症リスクに関与していることが報告されている5)。DRB1*1501アレルは高発症リスクと関連性が強い(オッズ比 8.5)。日本人16例の検討でも同様に,DRB1*1501アレルは高発症リスクと関連性が強い(オッズ比 6.4)6)。
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