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人生はじめて外来を任される時,医師はどうしてきたであろう。筆者が卒業した1983年当時は,当直や外勤先の外来では誰も先輩がいないなか,当方の運がよかったためかトラブルを起こさずに済んだが,ベテラン看護師に教えてもらいつつドキドキしながら外来診療を行った覚えがある。当時も,研修医を抱える医療機関は,ベテラン医師に若手をつけて一定期間外来のお手伝いと称した教育を施したのち,若手はベテランの外来の「やり方」を踏襲し,独り立ちしていった。さて,その外来の「やり方」は各医療機関や個人の医師がよかれと思ってそれぞれの工夫と責任で実践・伝授してきたが,指導書もなく,教える方も教わる若手も大変苦労するところであった。腎疾患は緩徐に進行するため,患者は長期間の通院が必要になる。その間,患者の疾患・病期により何をどのように話すのか? 患者とのコミュニケーションをどのようにしているか? 例えば,どのような時期・対象患者に腎生検を勧めるのか? 病初期に腎代替療法のことを話しても患者の通院モチベーションが低下してしまうかもしれないので,どの時期にどのように腎代替療法の必要性を話すのか? レニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬やsodium-glucose cotransporter-2(SGLT2)阻害薬の導入時のイニシャル・ディップをどのように話しているのか? 推算糸球体濾過量(eGFR)25mL/min/1.73m2以上で導入したが,イニシャル・ディップで25mL/min/1.73m2を下回った時にそのまま継続するのか? 継続するなら,レセプトの症状詳記をどうするのか? など,種々の工夫があると思われる。また,ネフローゼ症候群では,寛解導入のためのステロイド使用方法はガイドラインにあるが,減量や中止の時期・方法などエビデンスには表れない臨床家が本当に知りたい種々のコツがある。さらに,各病態で,初診時にどこまでスクリーニングをすべきか,保険で査定されない工夫もあるであろう。そこで本特集では,初診では検査を中心に,再診では治療を中心に執筆していただき,エビデンスにとらわれない臨床家が本当に知りたい外来でのコツを,専門外来にはじめて出るような若手の医師向けに,そしてベテランの医師に対しても知識の更新として役立つように,腎臓病について広くまとめることとした。
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