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はじめに
2020年に開始されたKidney360 Global Dialysis Perspectiveシリーズは,世界中のさまざまな国で透析がどのように実施され,提供され,資金提供されているかを報告している。そこでは現在の世界各地での透析状況が詳細に示されている1)。その報告によれば,世界的に,人口100万人当たりの末期腎不全(end-stage renal disease:ESRD)の有病率(人口100万人当たりの患者数)は,2003年から2016年にかけて着実に増加しており2),最も増加率の高い国々は特に中低所得国である3)。透析医療費は高額であるため,現在なお低所得国では透析への医療費使用が制限されている。具体的に2010年の各国の透析の有病率は,高所得国では100万人当たり1,176人,高中所得国で100万人当たり688人,一方,中低所得国で100万人当たり170人,低所得国で100万人当たり16人であった3)。世界的に腎代替療法の最も一般的に行われているのは透析療法(78%)であり,透析を受けている患者のうち,腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)を受けているのはわずか11%であった4)。これまでにも国民総所得とPDの使用の程度との間には相関関係認められないことが報告されている(図1)1)。1人当たりの国民総所得(GNI)が40,000ドル以上の国(高所得国)のなかで,PDを受けている患者の割合は,カナダ5)とオーストラリア6)で最高の25%から日本7)の最低3%までの範囲であった。同様に,ほとんどの低所得国(1人当たりGNI,10,000ドル以下)ではPDの利用率が10%程度であるが,この低所得カテゴリのなかで3カ国(メキシコ,グアテマラ,タイ)ではPDを28~59%使用している。一方,他の低所得の国でPDの使用が少ない理由の1つは,腎臓内科の研修生に対するPDのトレーニングが継続的に不足していることが報告されている。一方,PD比率の高い国々では,多くは国の政策によることが報告されている。
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