Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
治療介入がアウトカムに与える効果を正しく推定するために最も優れたデザインが無作為化比較試験(RCT)であるのは誰も異論がないだろう。適切に行われたRCTでは,治療介入を無作為に割り付けることによって,測定されているかどうかにかかわらず,患者の背景要因が交絡要因とならないことが保証される。したがってRCTにおいては,治療介入のアウトカムに対する効果は,治療介入を受けた患者群と受けていない患者群の間で直接アウトカムを比較することによって推定することができる。しかし,倫理的,経済的,そのほかの理由でRCTによって治療効果を推定することができないことも少なくない。RCTの存在しない治療について,目の前の患者にその治療を行うか否かの意思決定を行う場面を,臨床医は日常臨床においてしばしば経験する。このような時に臨床医は,観察研究の結果や自身の過去の経験をもとに治療介入を行うかどうかを決定している。しかしながら観察研究においては,より重症な患者ほど治療を受けやすいなど,治療の選択は患者の背景要因によって影響される。その結果,治療を受けた患者の背景要因は,治療を受けなかった患者と系統的に異なってしまう。そのため,治療がアウトカムに及ぼす効果を推定するには,治療を受けた患者と治療を受けなかった患者との間の背景要因の系統的な違いを考慮しなければならない。これまでの臨床研究では,治療を受けた患者と治療を受けなかった患者の間で測定された背景要因の違いを考慮するために回帰分析が行われてきた。2000年以降,観察データを使用する際に交絡の影響を取り除くために傾向スコアを用いた方法が注目されており,傾向スコアに関連する文献数は爆発的に増加している(図1)。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.