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特集 腎性貧血:HIF-PH阻害薬への期待と課題
【トピックス】
HIFと糖尿病性腎臓病
HIF and diabetic kidney disease
倉田 遊
1
,
田中 哲洋
2
,
菅原 真衣
1
KURATA Yu
1
,
TANAKA Tetsuhiro
2
,
SUGAHARA Mai
1
1東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科
2東北大学病院 腎・高血圧・内分泌科
キーワード:
低酸素
,
HIF
,
DKD
,
HIF-PH阻害薬
,
SGLT2阻害薬
Keyword:
低酸素
,
HIF
,
DKD
,
HIF-PH阻害薬
,
SGLT2阻害薬
pp.265-269
発行日 2022年8月25日
Published Date 2022/8/25
DOI https://doi.org/10.24479/kd.0000000271
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はじめに
低酸素誘導因子(hypoxia-inducible factor:HIF)は,生体における低酸素環境への順応を司る転写因子である。このHIFによる低酸素応答の解明に貢献したWilliam G. Kaelin Jr,Gregg L. Semenza,Sir Peter J. Ratcliffeの3名は,2019年のノーベル生理学・医学賞を受賞している。そのなかでもSir Peter J. Ratcliffeははじめてノーベル生理学・医学賞を獲得した腎臓内科医である。HIFは低酸素環境下において,標的遺伝子の転写誘導を介して造血・血管新生による酸素供給量の増加や解糖系へのシフトによる酸素需要の抑制など,さまざまな生体の防御機構を誘導する。造血にかかわるエリスロポエチンもHIFによって転写誘導される標的遺伝子の1つである。このHIFによる造血促進を活用した新規腎性貧血治療薬であるHIF-prolyl hydroxylase(HIF-PH)阻害薬が近年開発され,すでに臨床現場で使用されている1,2)。腎臓は血流が豊富な臓器である一方で,内部の動静脈シャントの存在により生理的に低酸素となっており,虚血に対して脆弱な臓器である。それに加えて慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)が進行すると,間質線維化などに伴う酸素供給の減少によりさらなる低酸素状態となり,この低酸素状態が線維化を促進するという悪循環に陥る3)。
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