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疾患の概要
Whipple病はTropheryma whipplei(T. whipplei)というグラム陰性桿菌の消化管などへの感染により生じる全身性の炎症性疾患である1)。小腸粘膜への感染による吸収不良を起因とした下痢,腹痛や体重減少に加え,中枢神経系,関節,心臓,肺,眼,皮膚などに感染が広がり,多彩な症状を呈する。関節痛や発熱が消化器症状に先行し出現することが多く,診断に難渋するケースも報告されている。本症は1907年にGeorge H. Whippleにより,多発性の関節炎に続き下痢や体重減少をきたした剖検例として初めて報告された。1992年には細菌に特異的な16S ribosomal RNA(16S rRNA)が特定され,Tropheryma whippleiと命名された。本疾患の発生頻度は100万人あたり約1人で,診断時の平均年齢は55歳,患者の85%が男性であるとされている。白人の罹患頻度が高く,アジア圏での報告は非常に稀である。T. whippleiは自然環境下に存在する菌であり土壌中や下水,農村地帯に特に多く存在するとされ,健常者の便や唾液中からも検出されることから感染経路は糞口感染が想定されている。HLA-B27陽性者やHTLV-1キャリアの感染者の報告が多いことや,単球やマクロファージ機能の異常が報告されており,本症の発症には細胞性免疫の異常との関連が想定されている2)。Whipple病の最も一般的な消化器症状は下痢を伴う体重減少だが,肝脾腫や肝炎が起こることもある。消化器症状がなくとも65〜90%で関節症状を伴う。また,中枢神経症状はWhipple病患者の6〜63%で報告され,中枢神経症状を発症した患者の25%が4年以内に死亡し,25%が後遺症をきたすと報告されており,中枢神経症状の合併は予後不良とされている。

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