腸型（胃腸混合型）分化型腺癌

Well differentiated tubular adenocarcinoma: Intestinal type and gastrointestinal type

はじめに

　本邦における胃癌のおもな原因と考えられているHelicobacter pylori（H. pylori，以下ピロリ）の感染率は，衛生環境の改善や，除菌治療の広まりにより低下している^1）。一方で，近年ではピロリ未感染と考えられる胃粘膜を背景とした胃癌の報告がされ，前庭部を中心とした領域に，腸型（胃腸混合型）分化型腺癌が発生することが明らかになってきた^2）。本稿では当センターで経験した症例を提示し，文献的考察を含めて記載する。なお提示症例のピロリ未感染の定義として，内視鏡所見に胃粘膜萎縮がなく，血清ペプシノーゲン法が陰性であり，ピロリ血清抗体検査，便中抗原検査，尿素呼気検査，組織鏡検法のいずれか二つ以上でピロリ感染が陰性と判断され，除菌歴がないものとした。また胃癌の形質について，免疫染色にてMUC5ACもしくはMUC6が陽性であれば胃型，MUC2もしくはCD10が陽性であれば腸型，両者が混在すれば胃腸混合型とした。