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はじめに
これまで非乳頭部の比較的小さな十二指腸腺腫は,積極的には内視鏡切除を行わずに経過観察されることが多かった。それは他の消化管(食道・胃・大腸)に比べて内視鏡切除に伴う偶発症発生頻度が高いこと1)と,そもそも遭遇頻度が低いために診療経験が少ないことがおもな要因と考えられる。しかし小さな腺腫に対して経過観察する際に,毎年繰り返し生検が行われると粘膜下層に線維化をきたしてしまう。もしあるタイミングで生検にてgroup 4や5が検出され,内視鏡切除を行うことになった際に,EMRを試みて粘膜下層に局注するも線維化のため病変が持ちあがらず,仕方なく慣れていないESDをトライしたところ,粘膜下層の高度な線維化のため穿孔をきたしてしまい,緊急手術に……というのが最悪のシナリオである。このような事態を回避するために,もし安全かつ簡便に切除ができるのであれば,繰り返す生検による経過観察よりも発見時に切除してしまったほうがいいのではないかと考えた。当時はちょうど大腸の小腺腫に対してcold snare polypectomy(CSP)が導入され,10mm以下の大腸腺腫に対する標準治療の一つになろうとしていた時期であった。CSPでは原則として局注は行わずに,スネアを用いて病変を絞扼し,通電せずにそのままスネアを締める力のみで切除する方法である。かつて日本では小さな大腸ポリープに対しては通電を用いたホットポリペクトミーやホットバイオプシー,あるいはEMRが標準的な手法であった。通電をせずに切除してしまうのは術者と介助者のタイミングが合わなかった際に生じるもので,通称「チギレクトミー」として扱われることが多く,いわゆる “手技のミス” であった。欧米では以前よりCSPの有効性が報告され,本邦でも徐々に行われるようになり,ホットポリペクトミーに比べて偶発症発生頻度の低い手技として瞬く間に広まり,現在では小さな大腸腺腫に対する標準治療の一つとなっている。2021年日本消化器内視鏡学会より刊行された大腸cold polypectomyガイドライン(大腸ESD/EMRガイドライン追補)では大腸CSPの適応として,「腺腫と術前診断された10mm未満の病変」と記載されている2)。
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