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疾患の概要
胃癌取扱い規約では,胃腺腫は胃型腺腫と腸型腺腫に分類されており,胃型腺腫は幽門腺腺腫(pyloric gland adenoma)を指す。一方,WHO分類1)では胃型上皮分化を示す腺腫として幽門腺腺腫に加え,foveolar-type adenoma,oxyntic gland adenomaがあげられ,「胃型腺腫」の用語の示す病変に違いがある点は注意が必要である。幽門腺腺腫の多くはHelicobacter pylori(H.pylori)感染または自己免疫性胃炎による萎縮粘膜を背景とし,胃体上部から胃体中部に好発する。肉眼型は隆起型と表面隆起型が多く,①丈の高い絨毛状隆起,②比較的表面平滑でくびれをもつ隆起,③中央に陥凹をもつ丈の低い隆起(内反性増殖),④結節集簇様で大腸のLST-G(laterally spreading tumor-granular type)に類似した外観を呈するものに分類される2)。NBI(Narrow Band Imaging)併用拡大観察では乳頭状・絨毛状の表面構造を呈する3)。病理組織像はground-glass appearanceと表現される泡沫状,弱好酸性の細胞質と円形核を有する細胞からなり,大小の腺管が狭い間質を介して密に増殖し,表層部はやや丈の高い胃腺窩上皮への分化を示す細胞が被覆する1)。免疫染色では広範にMUC6(幽門腺・頸部粘液細胞型粘液)の発現を認める。幽門腺腺腫は幽門腺に類似した組織学的特徴を示すが,MUC6に加えてpepsinogen-Ⅰをしばしば発現することから,むしろ頸部粘液細胞への分化を示す腫瘍と考えられる。MUC5AC(腺窩上皮型粘液)の発現は表層上皮に認められる点が特徴的であるが,しばしば深部の腫瘍腺管にも発現する。幽門腺腺腫は組織学的に幽門腺に類似するものの,おもに胃底腺領域に発生し,上述の通り頸部粘液細胞への分化を主体とする腫瘍であり,幽門腺腺腫という名称はmisnomerであるともいえる。
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