形態診断に役立つ組織化学・分子生物学
―上皮性腫瘍の粘液細胞形質診断―免疫染色(2):ムチン発現の遺伝子機構の解明と,胃と大腸の腫瘍における胃型ムチン(MUC5AC,MUC6)と腸型ムチン(MUC2)の発現について
米澤 傑
1
,
東 美智代
1
,
山田 宗茂
1
,
堀之内 道子
2
,
野元 三治
3
,
後藤 正道
1
1鹿児島大学大学院医歯学総合研究科先進治療科学専攻腫瘍学講座人体がん病理学
2鹿児島市医師会病院病理部
3鹿児島医療センター統括診療部臨床病理科
キーワード:
ムチン発現の分子機構
,
エピジェネティクス
,
MUC5AC
,
胃表層粘液型分泌ムチン
,
MUC6
,
胃幽門腺型分泌ムチン
Keyword:
ムチン発現の分子機構
,
エピジェネティクス
,
MUC5AC
,
胃表層粘液型分泌ムチン
,
MUC6
,
胃幽門腺型分泌ムチン
pp.916-922
発行日 2009年4月25日
Published Date 2009/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403101672
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はじめに
前回述べたように,最終的に癌患者の生命予後と関連するMUC1,MUC2,MUC4の各ムチンの発現について,免疫染色を行い臨床病理学的因子と比較することは,それらの発現の意味合いを知る意味で大変重要なことであるが,それはトランスレーショナル・リサーチの“出発点”であり,その段階でとどまっていたのでは“隔靴掻痒”の感は否めない.ムチン発現の臨床病理学的意義を確認できた次の段階としては,各ムチンがどのような遺伝子発現機構で制御されているかを探究して,ムチン発現の生物学的現象の根本を解明することにより,消化器腫瘍の診断や治療に役立つさらなる臨床応用が可能となる.本稿の前半では,これらのムチン(MUC1,MUC2,MUC4)の遺伝子発現の制御機構について述べる.
後半では,最近盛んに行われるようになってきた,胃型ムチンであるMUC5ACとMUC6と,腸型ムチンであるMUC2の免疫染色を組み合わせた胃や腸の腫瘍の粘液形質の分析について概説する.
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