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特集 内視鏡データリファレンスブック2022
【臓器別】
胃
Helicobacter pylori感染と胃癌
H. pylori infection and gastric cancer
加藤 元嗣
1
,
渡辺 亮介
1
,
東野 真幸
1
,
津田 桃子
1
,
久保 公利
1
Mototsugu KATO
1
,
Ryosuke WATANABE
1
,
Masayuki HIGASHINO
1
,
Momoko TSUDA
1
,
Kimitoshi KUBO
1
1国立病院機構函館病院消化器科
キーワード:
H. pylori
,
除菌治療
,
胃癌予防
,
除菌後胃癌
Keyword:
H. pylori
,
除菌治療
,
胃癌予防
,
除菌後胃癌
pp.625-630
発行日 2022年4月25日
Published Date 2022/4/25
DOI https://doi.org/10.24479/endo.0000000144
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Ⅰ Helicobacter pylori(H. pylori)関連疾患
H. pylori関連疾患には,慢性胃炎をはじめ,胃十二指腸潰瘍,胃MALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫,胃過形成性ポリープ,H. pylori関連ディスペプシアなどがあり,胃癌もH. pylori関連疾患の一つである1)。大部分の分化型および未分化型胃癌はH. pylori感染に伴う慢性炎症を背景として発症する(図1)。胃癌の原因はH. pylori感染だけではなく多因子が関与しているが,H. pylori未感染の場合には高濃度塩分の摂取,タバコなどの環境因子,加齢,遺伝子変異などの成因が加わっても発癌に至る症例は限られる。胃癌の発育進展にはH. pylori感染による慢性炎症がプロモーターとして必要で,胃発癌においてはH. pylori感染が最も重要な因子といえる。最近はH. pylori未感染胃癌が注目されているが,炎症のない胃粘膜にde novo型の胃癌が発生する割合は非常に低い。H. pylori除菌による胃癌発症の抑制効果は明らかになったが,その効果は除菌を受ける時期によって影響を受け,粘膜萎縮の程度によって一定の割合で除菌後胃癌の発症を認める。疫学的に胃癌の約10%がEBウイルス(Epstein-Barr virus:EBV)陽性であるが,H. pylori菌による慢性活動性胃炎の過程のなかで,EBV陽性Bリンパ球が癌化細胞に感染すると推測されている。
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