特集 抗菌薬の「なぜ?」に答える
薬剤耐性機序を知ろう
森田 邦彦
1
,
松元 加奈
1同志社女子大学 薬学部臨床薬剤学
キーワード:
抗細菌剤
,
細菌感染症
,
細菌薬剤耐性
,
服薬アドヒアランス
Keyword:
Drug Resistance, Bacterial
,
Anti-Bacterial Agents
,
Bacterial Infections
,
Medication Adherence
pp.1356-1360
発行日 2020年10月1日
Published Date 2020/10/1
DOI https://doi.org/10.24479/J00648.2021021140
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<Key Points>(1)主だった耐性機序として、(1)抗菌薬の膜透過性の低下、(2)分解あるいは化学修飾による抗菌薬の不活化、(3)作用点の変異による抗菌薬の親和性の低下、(4)代替酵素の産生、(5)抗菌薬の能動的排出、の5つがある。(2)耐性菌の選択増殖をめぐってmutant selection window(MSW)理論とよばれる概念が提唱されており、中途半端な血中濃度で長時間投与し続けると、感受性株だけが死滅し、生き残った耐性株は栄養素を独り占めにして増殖し蔓延することになる。(3)処方期間中であるにもかかわらず途中で「治った」と自己判断して服薬を中断するわが国の患者の割合は、世界トップクラスの高率である。(4)処方日数の半ばで患者の自己判断で服薬を中止すると、抗菌薬の血中濃度が低下してMSWの領域を通過する期間中にまだ生き残っている耐性菌だけが再増殖し、難治化につながる。
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