特集 血液疾患における薬剤の副作用とその対策
1.チロシンキナーゼ阻害薬での対策2)肺高血圧症(ダサチニブ)
萩原真紀
1
,
中島秀明
2
Maki Hagihara
1
,
Hideaki Nakajima
2
1横浜市立大学医学部 血液・免疫・感染症内科学 講師/横浜市立大学附属病院 中央無菌室 講師
2横浜市立大学医学部 血液・免疫・感染症内科学 主任教授
pp.681-686
発行日 2018年4月30日
Published Date 2018/4/30
DOI https://doi.org/10.20837/5201805681
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肺動脈性肺高血圧症の分類の1つに薬剤誘発性肺高血圧症があり,原因薬剤の1つにダサチニブが挙げられている。ダサチニブによる肺高血圧症発症の分子学的な機序は明らかになっていないが,肺動脈における平滑筋の過形成と血管内皮障害による肺血管のリモデリングによって起こる病態とされている。ダサチニブによる肺高血圧症は多くの場合可逆性とされているが,ときに重篤な転帰をたどる症例も報告されており,早期に診断し,ダサチニブを休薬,変更することが重要である。肺高血圧症の自覚症状としては労作時の呼吸困難や右心不全徴候が一般的であるが,非特異的な症状で無症状のまま進行することも多いため,実際には早期発見が難しい場合が多い。肺高血圧症のガイドラインでは,心臓超音波検査での右心機能や血行動態評価がスクリーニングとして有効とされており,ダサチニブ使用患者では積極的に行うことが勧められる。また,ダサチニブ以外のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)に関しても,少数ではあるが肺高血圧症との関連を示唆する報告がみられており,TKI使用中の患者で心肺関連の合併症が疑われる際には,ダサチニブに限らず,肺高血圧症の可能性も念頭に積極的な心臓超音波検査が必要と考えられる。