特集 造血器腫瘍の微小残存病変(MRD)
序 なぜ今,MRDであろうか?
畠清彦
1
Kiyohiko Hatake
1
1がん研究会有明病院 血液腫瘍科 部長
pp.1217-1218
発行日 2016年8月30日
Published Date 2016/8/30
DOI https://doi.org/10.20837/5201609017
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微小残存病変(MRD)に対する関心が,近年,ますます高まりを見せている。寛解に到達し,一見治癒したかに見えて,実は体内に依然として残存している微細な腫瘍細胞を“MRD”として捉え,治療ターゲットとすることは,治療戦略を考える上で大きなインパクトを与えてきた。このMRDの検出・評価は,治療効果判定や治療追加の要否,再発の早期予測,長期予後予測に至るまで,幅広い応用が期待されている。最近では,分子標的薬の登場による治療効果の進展を背景に,さらに高感度のMRD評価法も求められるようになり,ゲノム解析技術の活用も注目を集めつつある。一方,近頃の新薬は非常に高額なため,医療費が国家予算を圧迫するとの懸念も耳にするが,日本の医療費の対GDP比は欧米諸国に比べて決して高いわけではない。医療の真の価値を評価するには,かかった費用と得られた効果とのバランスの議論が不可欠なのであり,そのためにもMRDの概念は有用であると言える。本特集では,ますます重要性を増しているMRDの評価・検討が,各疾患においてどのように臨床に応用されているかを具体的に取り上げた。