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喘息の症状,既往歴の無い慢性閉塞性肺疾患(COPD)で,喀痰中に好酸球が存在する20症例を対象とした。気管支拡張療法の第一選択薬として吸入長時間作用性β2刺激薬(LABA)であるインダカテロールの定期投与を開始したところ,4~8週後には肺機能の著明な改善が認められ,一秒量(FEV1),最大吸気量(IC)はそれぞれ211.0,311.5 mL有意に増加した。コントロールの状態も著明に改善し,COPD Assessment Test(CAT)スコアは,15.1から7.9点に減少し,短時間作用性β2刺激薬(SABA)の使用頻度は,1.6から0.8回/週に減少した。好酸球性気道炎症がともなっているので,吸入ステロイド薬(ICS)を追加すると,FEV1,ICはそれぞれ147.0,227.6 mLとさらに有意に増加した。そして,CATスコア,SABA使用回数も4.9点,0.3回/週に有意に減少した。これらの薬物治療による肺機能の改善と,気道過敏性の亢進の有無とは相関は認められなかった。自験のCOPD症例は喘息の基本的な病態である好酸球性気道炎症が存在し,気道過敏性の亢進をともなう場合とともなわない場合に分類される。これらの症例についてasthma-COPD overlap syndrome(ACOS)のチェックリスト用いて評価すると喘息合併の判定には至らなかった。好酸球性気道炎症が存在しても喘息と判断できない可能性がある。そして,病態生理に沿った検査所見は,症状,肺機能検査所見で構成されるチェックリストに基づく判定結果と必ずしも一致しなかった。ゆえに,チェックリストによる診断には限界があることが推察される。 以上の結果からCOPDでは,喘息の合併とは独立して好酸球性気道炎症を有する表現型(phenotype)が存在し,ステロイド薬は肺機能やコントロールの改善に効果的である。ゆえに,好酸球性気道炎症の検索は,COPDにおけるステロイド薬の適応を決める客観的な指標となり得ると考えられる。さらに,COPDの第一選択薬としてLABAは十分な有効性が期待できる。