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連載 私達の研究(131)
原始クラミジアの生存戦略から探る病原体の新規制御システム
Lessons from primitive chlamydiae -A worthful biological tool for controlling human pathogenic intracellular bacteria-
山口博之
1
Yamaguchi Hiroyuki
1
1北海道大学大学院保健科学研究院病態解析学分野感染制御検査学 教授
キーワード:
原始クラミジア,アカントアメーバ,ゲノム,セリンプロテアーゼ(CPAF:chlamydial-protease associating factor),アポトーシス
Keyword:
原始クラミジア,アカントアメーバ,ゲノム,セリンプロテアーゼ(CPAF:chlamydial-protease associating factor),アポトーシス
pp.115-122
発行日 2014年1月25日
Published Date 2014/1/25
DOI https://doi.org/10.20837/2201402115
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原始クラミジアはクラミジアが哺乳動物に適応する以前の太古の姿を留めたアメーバ(アカントアメーバ)の共生細菌である。一般的な培養条件下(37℃)ではヒト細胞内で増殖することはできない。クラミジアは邪魔になる分子を改変,さらに捨てることでヒトを含む哺乳動物への適応進化に成功した。クラミジアはどのような分子を改変あるいは捨て,哺乳動物へ適応進化したのだろうか。一方,原始クラミジアは過酷な自然環境で暮らすアメーバの共生細菌であり,ゲノムのスリム化はほとんど起こっていない。原始クラミジアはクラミジアが哺乳動物に順応する過程で改変あるいは捨てたさまざまなプロトタイプ分子をいまだ温存している可能性が高く,それら分子の中には細胞内に侵入し増殖するさまざまな病原体への新たな対抗手段となりうるエフェクター分子が存在すると予想される。そこで私たちは,クラミジアが改変あるいは捨てた分子を求め,原始クラミジアが共生するアメーバを分離・株化し,その共生様式について検討を進めてきた。本稿では,原始クラミジアの宿主アメーバとの多様な共生様式と,クラミジアが哺乳細胞に適応する過程で改変されたことで真逆の生物活性(アポトーシス誘導から抑制へ)を生み出すようになったセリンプロテアーゼ(CPAF:chlamydial-protease associating factor)に関する私たちの研究成果を紹介するとともに,太古のクラミジアがヒトへと適応する過程で,発育至適温度環境のギャップがいかに大きな障壁であったか述べる。