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特集 わが国でも問題のベクター媒介性感染症
3.日本脳炎ウイルスの国内越冬と海外飛来
Domestic overwintering and overseas migration in Japanese encephalitis virus
沢辺京子
1
Sawabe Kyoko
1
1国立感染症研究所昆虫医科学部 部長
キーワード:
日本脳炎ウイルス
,
媒介蚊
,
野生動物
,
国内越冬
,
海外飛来
Keyword:
日本脳炎ウイルス
,
媒介蚊
,
野生動物
,
国内越冬
,
海外飛来
pp.39-49
発行日 2014年1月25日
Published Date 2014/1/25
DOI https://doi.org/10.20837/2201402039
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日本脳炎は,わが国において国内感染が報告される唯一の蚊媒介性感染症である。日本脳炎ウイルス(JEV)の活動は毎年夏季に活発になるが,冬季の生態はほとんどわかっておらず,その生活環に関する長年の議論の結論はいまだ出ていない。本稿では,媒介蚊と野生動物,国内越冬と海外飛来をキーワードに,JEVの国内での越冬と海外からの侵入を考察した。2008年12月に捕獲されたイノシシの血液から近年のアジアの流行株である1型JEVが分離された。一方で,JEVの主要な媒介蚊であるコガタアカイエカは,その生理的な現象からウイルスの越冬に関与しないだけでなく,蚊自身が越冬可能な地域も限局されることが判明した。これらの結果から,わが国に土着するJEVは,イノシシ等の野生動物の体内で,あるいはコガタアカイエカ以外の蚊の中で越冬する可能性が高いと推察された。コガタアカイエカの高い飛翔能力が明らかになり,気象情報をもとにした解析を行った結果,大陸から飛来することが知られるウンカ類と同様に,コガタアカイエカも初夏に下層ジェット気流を利用して東シナ海を渡ってきていることが示唆された。海外より侵入するJEVはウイルスを保有したコガタアカイエカの長距離飛翔によって海外から運ばれてくる可能性が高いと推察された。