連載 感染症診断と病理(18)
血液塗抹標本にみつかる病原体(1)
堤寬
1
1つつみ病理相談所・所長
1〈E-mail:pathos223@kind.ocn.ne.jp〉
pp.2531-2540
発行日 2018年12月1日
Published Date 2018/12/1
DOI https://doi.org/10.20837/12018122531
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横浜国際女子駅伝に参加する23歳のケニア人選手が,発熱を訴えて駅伝出発点にほど近い総合病院に来院した。駅伝前日のことだった。末梢血Giemsa染色で赤血球に感染する熱帯熱マラリア原虫を少数認めたため,本人が持参していたクロロキンを飲むこととなった。そして翌日,彼女は駅伝区間を走りきった。実は,6人の駅伝選手のうちもう1人も発熱し,塗抹標本でマラリア原虫が確認された。さて,結果は?全日本チームが優勝。ケニアチームは新聞記事に掲載されない成績だった。さもありなん。それにしても,マラリア原虫を抱えながらの長距離走。さすが!巻頭図にGiemsa染色液のpHによる染色性の違いをあわせて示す。pH 7.2(左)では赤血球が灰青色に染色され,通常のpH 6.4(右)に比べて,輪状体がみやすくなる。本稿では,まず原虫症3種を紹介する。