特集 免疫チェックポイント療法の新潮流
5.バイオマーカーの位置付けと今後の展望
北野滋久
1
1国立がん研究センター中央病院先端医療科
pp.1837-1842
発行日 2018年8月1日
Published Date 2018/8/1
DOI https://doi.org/10.20837/12018081837
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現在,免疫チェックポイント阻害薬の臨床開発は成功を収め適応の拡大が進んでいるが,単剤のみで臨床効果を認める患者は一部に限られる。また,薬剤費も高額であることから,効果予測バイオマーカーの開発が重要な課題となっている。先行して開発されているコンパニオン診断薬として,免疫組織染色による腫瘍組織でのPD-L1(programmedcell death ligand 1)の発現がある。だが,PD-L1の発現は腫瘍微小環境の影響を受け発現が変化する動的なマーカーであり,バイオマーカーとしては一部のがん腫にしか適応できない。
現在,腫瘍微小環境,末梢血を中心に,各種免疫解析および遺伝子解析手法をもって,さまざまなアプローチでバイオマーカーの探索研究が行われている。空間的・時間的および動的に変化して複雑なネットワークを形成するがんと宿主免疫系を,単一のバイオマーカーで治療効果を予測することは困難であると考えられる。将来的には,腫瘍の性質や介入する治療法に応じて複数のバイオマーカーを組み合わせたスコアリング評価が必要となるかもしれない。