特集 抗インフルエンザ薬物療法 update~最新の診断・治療戦略~
6.インフルエンザワクチンの動向~国内外の状況~
中山哲夫
1
1北里生命科学研究所ウイルス感染制御・特任教授
pp.2283-2287
発行日 2017年10月1日
Published Date 2017/10/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201710099
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現行のインフルエンザスプリットワクチンは血中にIgG抗体を誘導するのみで,粘膜局所にIgA抗体を誘導することはなく,Th2応答に偏った免疫応答を誘導し,IgE抗体の感作を増強しアナフィラキシーの原因ともなっている。また,流行株との抗原性の不一致のみならず,鶏卵馴化の過程で抗原性が変化し,有効性には限界が見えてきた。有効なワクチンはTh1/Th2のバランスのとれた免疫応答を誘導し,かつ,局所粘膜免疫を誘導する必要がある。鶏卵に依存しない細胞培養による抗原の製造や,ワクチン自体の剤型として全粒子不活化ワクチンや弱毒生ワクチン,投与ルートとして皮内接種と噴霧経鼻ワクチンが検討されており,数年後には数種類のインフルエンザワクチンの選択肢も増えてくる。