連載 ●副作用・薬物相互作用トレンドチェック
注目論文を読み解く(59)
佐藤宏樹
1
,
澤田康文
2
1東京大学大学院薬学系研究科育薬学講座
2東京大学大学院薬学系研究科育薬学講座 客員教授
キーワード:
● 好酸球性心筋炎,低血糖,心筋症,CYP阻害,イワベンケイ
Keyword:
● 好酸球性心筋炎,低血糖,心筋症,CYP阻害,イワベンケイ
pp.914-919
発行日 2017年3月1日
Published Date 2017/3/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201703152
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〔今月の注目論文のポイント〕 1.デンマークの有害事象自発報告データベースの調査から,推奨量を超える用量のオランザピンを服用していた患者が好酸球性心筋炎のため死亡した2症例が報告されている。 2.米国の医療記録データベースを用いたコホート研究において,メトホルミン単独服用の糖尿病患者と比較して,スルホニルウレア薬単独服用の糖尿病患者では低血糖のリスクが有意に高く,腎機能の悪化とともにリスクが上昇することが報告されている。 3.米国の乳癌組織バンク登録のデータを用いた症例対照研究において,乳癌に対するAC療法(ドキソルビシン+シクロホスファミド)による心筋症のリスクがトラスツズマブの併用,糖尿病の合併,8杯/週以上の飲酒によって上昇することが報告されている。 4.米国の健康保険データベースを用いたコホート研究において,タモキシフェンと選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRIs)の併用による全死因死亡リスクは,CYP(チトクロムP450)2D6を阻害するSSRIsと他のSSRIsで変わらなかったことが報告されている。 5.高血圧のためベラパミルを含む配合剤を服用していた患者において,ベラパミルの服用に気づかずに再発性マントル細胞リンパ腫のためイブルチニブが通常量で開始され,重度の下痢を呈した症例が報告されている。 6.健康成人を対象とした試験において,イワベンケイの摂取によりロサルタンの代謝活性の低下を認め,CYP2C9の活性を阻害する可能性が示唆されている。