特集 最新のがん免疫療法
4.メトホルミンによる抗腫瘍効果
榮川伸吾
1
,
鵜殿平一郎
2
1岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 病態制御科学専攻 腫瘍制御学講座 免疫学分野
2岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 病態制御科学専攻 腫瘍制御学講座 免疫学分野 教授
pp.1065-1070
発行日 2016年4月1日
Published Date 2016/4/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201604085
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
近年,2型糖尿病薬メトホルミンは抗腫瘍作用があるとの報告があり,岡山大学ではマウス腫瘍移植モデルにおいて,その抗腫瘍作用は免疫系,特にCD8 T細胞の機能を介した作用であることを報告している。腫瘍内でCD8 T細胞の多くはアポトーシスを起こし,機能も低下しているが,メトホルミン投与によりアポトーシスが抑制され,高機能なエフェクターメモリー型のCD8 T細胞が誘導される。その作用機序としては,AMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)の活性化を介した解糖系(糖代謝)の制御が重要ではないかと考えられる。現在,代謝と免疫応答の関係は非常に注目されたトピックスであり,効果的ながん免疫治療を考える上でも代謝の観点からのアプローチは必要であろう。本邦では,糖尿病薬メトホルミンについて,またその抗腫瘍作用の機序,糖代謝とT細胞応答,T細胞疲弊の関係について言及したい。