特集 認知症 ~病態と治療~
1.アミロイドβ(Aβ)蛋白の蓄積
松原悦朗
1
1大分大学医学部医学科神経内科学講座・教授
pp.839-842
発行日 2016年3月1日
Published Date 2016/3/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201603839
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
アルツハイマー病(AD)の発症病態は依然として不明な点が多いが,その基本病態は脳の神経細胞内外への主として線維性構造物の蓄積を認める,いわゆる“原因蛋白の蓄積病”である。このAD脳内病理過程で観察される最早期変化は細胞外に認められ,アミロイドβ(Aβ)を主要構成成分として主に非線維性のびまん性形態をとる,びまん性老人斑もしくは線維性で斑状の嗜銀性構造物(原始老人斑や典型的老人斑等)として知られている。最近,家族性AD家系自然史のアミロイドイメージング研究の成果から,その線維性のアミロイド蓄積は認知症発症に先行して約15年前から認められ,AD病理の脳内発症は潜行した形で用意周到になされていることが判明し,ADへの治療介入は二次予防へと大きくシフトしている。 本稿においては,こうした現状を踏まえ,別稿で述べられるバイオマーカー・治療薬開発戦略を理解するためのAβ蛋白の蓄積に関した背景知識を整理して紹介する。