Japanese
English
総説
アルツハイマー病とアミロイドβ蛋白
Alzheimer's Disease and Amyloid β-Protein
池田 修一
1
Shu-ichi Ikeda
1
1信州大学医学部第三内科
1Department of Medicine (Neurology), Shinshu University School of Medicine
pp.1051-1064
発行日 1989年11月1日
Published Date 1989/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206416
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I.はじめに
我国を含む先進諸国では,近年急速に高齢化社会を迎えつつある。こうした中で年々増加傾向を示す痴呆老人への対処は社会的にも大きな関心を集めており,また同時に,老年痴呆の原因究明は今や医学の最も重要なテーマとなりつつある。老年痴呆は従来から脳血管障害性とアルツハイマー型の二つに大別されている。一方初老期に発症し,特有な精神神経症状と痴呆が短期間に進行する疾患にアルツハイマー病がある。本疾患は病理学的には脳のび漫性萎縮と共に多数のアルツハイマー原線維変化と老人斑の出現を特徴とする(Fig. 1—B and C)。これに対し65歳以後の老年期に発症し,痴呆を主徴とする大脳機能の全般的低下が緩徐に進行するアルツハイマー型老年痴呆においても,脳の病理学的変化がアルツハイマー病と本質的に異ならないことが一般に知られるようになった1)。このため最近は両者を一括してアルツハイマー病と呼ぶ傾向にあり,本稿でも以下この表現を同様の意味で用いる。
アルツハイマー病の原因究明は,従来から脳で見られる異常構造物,すなわち神経原線維変化と老人斑に着目して進められて来た。特に近年は,本症患者脳において高率に出現する脳血管アミロイドーシスと老人斑アミロイドの構成蛋白に関する研究が精力的に行われている。本稿では,このアミロイド蛋白(β蛋白)に関する最近の知見を紹介する。
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