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はじめに
アルツハイマー病(AD)は老人性痴呆の1/3以上を占める主要な痴呆性疾患であり,その発症機序として最も有力なのは,βアミロイドカスケード仮説である1)。これは一回膜貫通蛋白質であるアミロイド前駆体蛋白質からβセクレターゼ,γセクレターゼという2種類の酵素によって切り出されてくるアミロイドβ蛋白質(Aβ)が,βシート構造に富んだ凝集体を形成し,神経細胞に沈着して神経毒性を示すというものである(図1)。Aβの主要分子種はAβ(1-42)(DAEFRHD-SGY10EVHHQKLVFF20AEDVGSNKGA30IIGLMVGGVV40IA)と,これよりC末端側が2残基少ないAβ(1-40)である。この仮説は,①Aβの脳内異常蓄積はAD患者に例外なく観測される,②家族性ADに関連する遺伝子変異がAβの異常凝集を引き起こす,および③凝集Aβが神経毒性を発現する,などの事実に基づいている。このAβの凝集・沈着機構の解明が,AD発症機構の解明と治療法の開発にとって極めて重要である。
しかし,生理的なAβは10nM以下と極めて低濃度で存在し可溶性であり,自発的な凝集が起こるとは考えられない。したがって,in vivoで凝集が起こるためには,病的状態に特有な凝集メカニズムを考える必要がある。
The conversion of soluble, nontoxic amyloid β-protein (Aβ) to aggregated, toxic Aβ rich in β-sheet structures by seeded polymerization is considered to be the key step in the development of Alzheimer's disease (AD). GM1 ganglioside-bound amyloid β-protein (GM1-Aβ), found in brains exhibiting early pathological changes of AD plaques, has been suggested to accelerate amyloid fibril formation by acting as a seed. Aβ recognizes a GM1 cluster, the formation of which is facilitated by cholesterol.
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