医薬ジャーナル論壇
心房細動薬物療法における薬剤師の役割―鍵を握るNOAC/ワルファリンの使い分け―
前田健一郎
1
1本誌編集部
pp.27-29
発行日 2015年7月1日
Published Date 2015/7/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201507027
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わが国の高齢化は,2015年には団塊の世代が全て65歳以上になるなど,ますます加速しつつある。超高齢者の増加とともに,要介護人口も急増しており,2010年には390万人であった寝たきり・要介護高齢者は,2025年には520万人に達すると推計されている。このような中で,近年,特に注目されるようになったのが心房細動である。 心房細動は不整脈の一種で,動悸や胸の痛み,ふらつき,全身倦怠感などを主症状とする。その罹患率は加齢に伴って急上昇し,80歳以上では約10人に1人が有病者となる。従来,わが国の心房細動の有病率は,欧米に比べれば低いとされてきた。しかし,高齢化の進展を背景に,2010年には約80万人とされた患者数が,2030年には100万人を超えると予想されている。 心房細動自体は,すぐ命に関わるような致死的な疾患ではないとされる。だが,心臓の拍動が不規則になることから,血流停滞によって心臓内に血栓が発生。それが脳動脈に至り,心原性脳梗塞を引き起こす。心原性脳梗塞では,突然,脳の血管が詰まるために脳内の梗塞範囲が広く,重い後遺症や寝たきりの原因にもなりやすい。しかも心房細動患者は,心原性脳梗塞の発症率が健常人の5倍にも達するとされ,十分な予防対策が必須となる。