特集 臨床研究の倫理的課題 ~最近の動向,論点,展望~
9.医学研究者の倫理的責務としての追加的ケア:部分委託モデルの概要と課題
林芳紀
1
1立命館大学文学部人文学科哲学・倫理学専攻・准教授
pp.1997-2001
発行日 2014年8月1日
Published Date 2014/8/1
DOI https://doi.org/10.20837/12014081997
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
近年,特に開発途上国の人々を対象とした医学研究の文脈で発生する倫理問題の一つとして,「追加的ケア」の問題が注目されている。本稿では,この問題に関して現在最も有力な理論的枠組と目される「部分委託モデル」を概観し,その利点と欠点,および残された課題を考察する。部分委託モデルは,なぜ,そしてどこまで研究者は,被験者に対して追加的ケアを提供する責務を負うのかという問題に対して整合的な回答を与えるとともに,多種多様な研究の場面で発生する追加的ケアの責務の問題に対して,系統的な考察を可能にするという利点がある一方,途上国の被験者や被験者以外の人々に対する医学研究者の責務の全体像を描き出すまでには至っていない可能性がある。