発行日 2012年12月20日
Published Date 2012/12/20
DOI https://doi.org/10.19020/J01937.2013147180
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症例は80歳代男性で、2型糖尿病に対し定期受診していたが、タール便を認め、コーヒー残渣様の嘔吐が出現したため救急搬送され、精査加療のため緊急入院した。血圧110/76mmHg、眼瞼に軽度貧血を認め、白血球数高値、腎前性腎障害、高血糖が認められた。緊急内視鏡検査を行い、中部食道から食道胃接合部にかけ粘膜は全周性に脱落していた。下部食道には黒色凝血塊が付着し、著明な黒変が認められた。扁平円柱上皮接合部(SCJ)より肛門側の粘膜は保たれていた。食道胃接合部には食道裂孔ヘルニアの所見が認められた。胃内、十二指腸内には出血源は認められなかった。黒変部からの生検では壊死組織、肉芽組織が主体に認められた。絶食・補液管理とし、制酸剤・抗菌薬投与など保存的治療により、脱水・腎機能障害、炎症所見は速やかに改善した。内視鏡所見も経過と共に食道炎の改善が認められ、入院60日目に完全に上皮化が認められた。また、悪性腫瘍の検索で早期胃癌および横行結腸癌を認め、それぞれ内視鏡的切除、外科的切除を行った。現在まで再発を認めていない。
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