- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
消化器における「拡大」内視鏡の開発は町田製作所やオリンパス社により,ファイバースコープの発達とともに1960年代後半に始まった.最初の倍率は5〜20倍程度であった.X線診断と内視鏡診断による早期癌診断のスパイラルアップのなかで,1977年“幻の癌”とみなされていた大腸Ⅱc病変が発見された.筆者はこれにde novo癌としての位置づけを与えた.筆者と当時の若き同僚達は,Ⅱc型早期癌や他の早期癌症例を検討し,“Ⅱcのpit patternは,小類円形Ⅲs pitであること”を突き止めた.さらに,実体顕微鏡での表面微細構造の観察を行い,病理組織と対応したpit pattern分類を作成した.とくに,癌の指標であるⅤ型pitこそがこの研究の中心点であった.われわれは,確実に癌の診断を行えるように実体顕微鏡下にⅤ型pitに対応する切り出しを行い,症例を重ね,pit pattern分類の検証を積み重ねた.他方,クリスタルバイオレットを使用しながら,当時としては初歩的であったが,拡大内視鏡への挑戦を行いつつあった.拡大内視鏡に基づくこのpit pattern診断は,われわれの論文や大腸Ⅱc研究会でのdiscussionを通じ,少しずつわが国に広まっていった.そして,1993年,われわれはオリンパス社と共同し,ついに拡大電子スコープCF-200Zを世に出すことができた.しかし当初のものは,先端硬性部の長さ,径の太さや硬度の点で操作性,挿入性にまだ問題があった.1999年に登場したオリンパス社のCF-240Zは,CF-200Zの操作性,挿入性が大幅に改善され,また細径のPCF240Zも発売され,拡大内視鏡をルーチン検査に用いることにほとんど抵抗がなくなった.
Copyright © 2020, Nihon Medical Center, Inc. All rights reserved.