特集 慢性便秘症の診療のポイント
7.薬剤性便秘の診断と治療
結束 貴臣
1,2,3
,
石原 洋
1,2,3
,
髙橋 宏太
1,2,3
,
中島 淳
3
1国際医療福祉大学成田病院緩和医療科,消化器内科
2国際医療福祉大学大学院消化器内科学
3横浜市立大学大学院肝胆膵消化器病学教室
キーワード:
オピオイド誘発性便秘
,
抗コリン薬
,
便秘
,
末梢性μオピオイド受容体拮抗薬
,
ナルデメジン
Keyword:
オピオイド誘発性便秘
,
抗コリン薬
,
便秘
,
末梢性μオピオイド受容体拮抗薬
,
ナルデメジン
pp.355-362
発行日 2025年2月20日
Published Date 2025/2/20
DOI https://doi.org/10.19020/CG.0000003384
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「便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症」が発売になり,これまで曖昧であった便秘診療のアルゴリズムが明確化された.本稿では薬剤性便秘,とくにオピオイド誘発性便秘(OIC)を中心に説明する.薬剤性便秘と聞くとOICと思いがちであるが,実はほかにも多くの薬剤性便秘が存在する.内科外来診療であれば鉄剤,循環器系であれば利尿薬,カルシウム拮抗薬,精神科であれば抗精神病薬,抗うつ薬に含まれる抗コリン薬などである.これらは臨床現場で遭遇頻度が高い薬剤性便秘であるが,その治療は対症療法や原因薬剤の減量・中止・変更がメインである.一方でOICは,痛み止めであるオピオイドの内服による便秘である.オピオイドと聞くと,がん患者を想定するが,整形外科で腰痛や膝の痛みで使用するトラマドールやトラマドール・アセトアミノフェン製剤も弱オピオイドである.これらの弱オピオイドも強オピオイドと同程度,便秘で患者を悩ませている.さらに今回,OICに注力する理由は,OICは薬剤性便秘のなかでも唯一原因治療薬が存在することである.これまでOICに対して,従来は大腸刺激性下剤や浸透圧性下剤が選択されていたが,近年では末梢性μオピオイド受容体拮抗薬(ナルデメジン)が販売され,OICのメカニズムに沿った治療が可能となった.本稿では,OICの診断や治療に関して臨床上得た知見を紹介する.
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