消化管がん検診・スクリーニングの手引き
Ⅲ 胃がん検診・スクリーニング ❺ 血 清による胃がんリスク層別化検査(ABC 分類)の現状と課題
吉田 岳市
1
,
井口 幹崇
1
,
宮本 紗江
2
,
渡邊 実香
2
,
前北 隆雄
1
,
北野 雅之
1
1和歌山県立医科大学第二内科
2NSメディカル和歌山診療所
キーワード:
萎縮性胃炎
,
高度活動性胃炎
,
血清ペプシノゲン
,
Helicobacter pylori感染胃炎
,
胃がん発生
Keyword:
萎縮性胃炎
,
高度活動性胃炎
,
血清ペプシノゲン
,
Helicobacter pylori感染胃炎
,
胃がん発生
pp.942-946
発行日 2021年7月15日
Published Date 2021/7/15
DOI https://doi.org/10.19020/CG.0000001866
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胃がん発生はHelicobacter pylori(H. pylori)感染胃炎の自然史と密接に関連している.H. pylori感染胃炎の自然史は,萎縮性胃炎の指標であるペプシノゲン(PG)とH. pylori感染を診断する特異抗体の二つの血液検査によりA群〔PG(-),H. pylori(-)〕,B群〔PG(-),H. pylori(+)〕,C群〔PG(+),H. pylori(+)〕,D群〔PG(+),H. pylori(-)〕の4群に病期分類可能である.A群はH. pylori未感染群,B群はH. pylori感染成立群,C群は高度萎縮性胃炎群,D群は萎縮性胃炎進展による高度腸上皮化生合併群(H. pyloriが自然除菌された“いわゆる化生性胃炎”)に理論的にそれぞれ相当し,H. pylori感染胃炎の自然史はA群からD群への進行として表される.この過程は胃がんの主要な発生経路として広く認識されてきた.また,この血清評価を実施した対象者を長期間追跡した複数の観察研究の結果,H. pylori感染胃炎病期の進行に伴い,胃がん発生リスクが段階的に高まることが明確に示されている.このような知見を背景に,血清PGおよびH. pylori抗体により各個人の胃がんリスクを推定するのが,血清による胃がんリスク層別化検査である.相当数の自治体の胃がん検診にすでに導入されている(31.6%,日本対がん協会アンケート調査,2019年)一方で,血清を用いた胃がんリスク層別化検査の現状は,多くの検討課題を抱えた未完成な段階にとどまるものである.本稿では,胃がん検診における血清診断の現状と課題について概説する.
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