特集 リンチ症候群と遺伝性消化管ポリポーシス
巻頭言
冨田 尚裕
1
1兵庫医科大学外科学講座下部消化管外科
pp.589-590
発行日 2019年5月20日
Published Date 2019/5/20
DOI https://doi.org/10.19020/CG.0000000752
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遺伝要因によって家系内に多くのがんの発症をみることがあり,遺伝性腫瘍あるいは家族性腫瘍と総称される.そのなかで頻度的に多く臨床上もよく話題となるのが,遺伝性大腸がんと遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)である.遺伝性大腸がんは,従来から,ポリープが多発する特徴的な表現型である“ポリポーシス”を伴うものと伴わないものに大別して整理分類されることが多い.前者の代表は,大腸全体に通常数百~数千個以上の腺腫性ポリープの発生をみる家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis;FAP)であり,後者の代表がリンチ症候群(Lynch syndrome;LS)で,いずれも常染色体優性遺伝形式をとる典型的な遺伝性腫瘍症候群である.しかしながら,FAP については腺腫数が100 個に満たない亜型も含めていくつかのサブタイプがあり,常染色体劣性遺伝形式をとるMYH 関連ポリポーシスといった類縁疾患や腺腫以外の組織型のポリープを多発する消化管ポリポーシスがいくつか知られている.また,LS においても多発性大腸腺腫を伴う場合があり,これらの遺伝性消化管疾患やポリポーシス症例における鑑別診断は臨床上必ずしも容易ではない.
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