特集 胆囊癌診療の現況
巻頭言
露口 利夫
1
1千葉大学医学部附属病院内視鏡センター
pp.125-126
発行日 2019年1月20日
Published Date 2019/1/20
DOI https://doi.org/10.19020/CG.0000000642
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今月は胆囊癌の特集である.内視鏡診断から外科的治療まで広い視点から胆囊癌診療を把握できるような執筆陣と項目立てで構成されている.胆囊癌における診断・治療は未だ満足のゆく状況ではないが,巻頭言として私見を述べさせていただきたい.最近の疫学研究では糖尿病や体脂肪の増加,すなわち肥満が胆囊癌の危険因子であることが明らかにされている.糖尿病については,インスリン抵抗性に伴う高インスリン血症や高インスリン様成長因子による腫瘍増殖促進,活性型エストロゲン増加による上皮の増殖促進などがその発癌機序と考えられている.肥満は,高インスリン血症,脂肪組織の慢性炎症,アディポカインなどによる直接的な影響だけでなく,肥満による胆石形成を介して間接的に胆囊癌の危険因子となりうる.そして胆石の疫学研究では,結石径3 cm 以上,有症状例,胆石保有期間が長いことなどが胆囊癌危険因子とされ,胆石に伴う上皮の慢性炎症が異形成や癌化を促進すると考えられている.しかしながら,無症候性胆石(多くは肥満,糖尿病を合併している)の長期にわたる経過観察では胆囊癌発生率は低率とされており,胆囊癌ハイリスクグループをどう設定し効率的な早期診断に結びつけていくかといった検討にはさらなる知見が必要である.先天性膵・胆管合流異常も胆囊癌の危険因子として知られているが,その成り立ちは膵液の逆流に伴う慢性炎症とされている.この膵・胆管合流異常は診断さえつけば予防的胆囊摘出術を行えるが,合流異常そのもの,とくに先天性胆道拡張非合併例を効率よく診断する方策は確立されていない.
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