特集 医療におけるソーシャル・ビジネスの展開
巻頭言
広井 良典
1
1千葉大学法経学部
pp.173
発行日 2010年3月1日
Published Date 2010/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101644
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「ソーシャル・ビジネス」や「社会起業家」という言葉がよく使われるようになっており,社会的な関心が高まっている.ここで「ソーシャル・ビジネス」とは,経済産業省の「ソーシャルビジネス研究会」報告書(2008年4月)によれば,「社会的課題を解決するために,ビジネスの手法を用いて取り組むもの」で,①社会性,②事業性,③革新性の3つを備えていることが基本的な特徴である.そして想像されるように,こうしたソーシャル・ビジネスには医療や福祉に関連するものが多く,同報告書の調査でも,「保健・医療・福祉」分野は全体の24.5%を占め,「地域活性化・まちづくり」(60.7%)に次いで2番目の多さとなっている.
ソーシャル・ビジネスは,その言葉自体の新しさにも示されるように,なお未知数の要素を多く含むものであるが,それが望ましい形で発展していくならば,閉塞感ということが言われて久しい日本社会に“新しい風”をもたらす可能性をもっている.また,ソーシャル・ビジネスの上記3つの要件をあらためて見直すと,実は「病院」の運営ないし経営は(それが革新性を備えるとすれば)それ自体がソーシャル・ビジネスと言える側面を持っている.そして本特集の中で様々な事例を見ていくように,新たに起こりつつあるソーシャル・ビジネスと病院が適切な形で連携していくことは,病院や患者,一般市民にとってもプラスの効果を持ちうる.
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