特集 新規リン低下薬テナパノル症例集―使い方,副作用への対処
7.間食が多く,高リン血症が持続していたが,テナパノル塩酸塩の半年間の投与によってリン管理が改善傾向を示した使用経験
松尾 浩司
1
,
山本 卓
2
1新潟白根総合病院腎臓内科
2新潟大学大学院医歯学総合研究科腎研究センター腎・膠原病内科学分野
キーワード:
テナパノル塩酸塩
,
慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常
,
高リン血症
Keyword:
テナパノル塩酸塩
,
慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常
,
高リン血症
pp.1252-1256
発行日 2025年9月10日
Published Date 2025/9/10
DOI https://doi.org/10.19020/CD.0000003580
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これまでの高リン血症治療薬は,作用機序として遊離イオン型,非遊離イオン型の違いはあるものの,腸管内においてリンを吸着し糞便中リン排泄量を増やしてリン吸収量を減らすという作用機序は同様であった.一方,令和6年2月から本邦で使用可能となったテナパノル塩酸塩(以下,テナパノル)は,腸管上皮細胞の頂端膜に発現するナトリウムイオン(Na+)/プロトン(H+)交換輸送体3(NHE3)を選択的に阻害する薬剤である.NHE3はNa+と体液量のバランスの維持において中心的な役割を担っており,NHE3を阻害することで細胞膜におけるNa+とH+の交換輸送が阻害され,ナトリウムの吸収が低下し,腸管上皮細胞内のH+濃度上昇により細胞内のpHが低下することで腸管上皮細胞間隙でのリン透過性が低下する.これによって,リンの吸収が抑制され,血中リン濃度を低下させる.また,経口投与で吸収されにくい特徴を有する.

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