OPINION
透析導入原疾患について思うこと
長谷川 元
1
1埼玉医科大学総合医療センター腎・高血圧内科学
pp.517-518
発行日 2021年6月10日
Published Date 2021/6/10
DOI https://doi.org/10.19020/CD.0000001732
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透析患者数は30万人を大きく超え,残念ながら現在も増加を続けている.透析医学会関係各位のご努力によりまとめられている「わが国の慢性透析療法の現況」に明らかなように,透析患者数の増加は75歳以上の高齢導入患者の増加が主因であり,国が政策目標に掲げる「新規導入の10%削減」の達成には,高齢腎不全患者へのアプローチが重要との認識が共有されている.高齢透析患者の増加は高齢人口の増加だけでは説明できないことから,高齢化とともに増加する,あるいは高齢者で進行しやすい腎疾患に関する解析と対策が必要である.さらに,年齢標準化透析罹患率による解析では,わが国における透析患者の男性優位は拡大傾向で,米国と比べた場合の特徴ともいえることを,広島県三次市の実地医家である小根森博士らが,公表されている資料の解析結果をもとに報告されている(小根森元,他:日腎会誌 2020;62:823-828,透析会誌 2020;53:15-20など).日本腎臓学会からも,唯一高齢男性のみ透析導入が増加し続けていることが明らかにされており,透析患者抑制に向けた最大のターゲットは高齢男性ということになる.一方,小根森先生らは透析導入原疾患の日米差に着目し,わが国の透析原因疾患として腎硬化症が過小に見積もられている可能性を指摘されている.とくに日本では「原因不明」の割合が高く,かつ増加傾向が高齢者で目立つ点は,「不明」の比率が近年縮小している米国と対照的であり,「不明」のなかに腎硬化症が一定程度含まれている可能性を推論されている.
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