特集 腎性貧血治療のこれまでと,その新しい展開
4.これまでの腎性貧血治療(2)腎性貧血における鉄の課題
濱野 高行
1
1名古屋市立大学大学院医学研究科腎臓内科
キーワード:
PIVOTAL研究
,
血栓塞栓症
,
ミトコンドリア
Keyword:
PIVOTAL研究
,
血栓塞栓症
,
ミトコンドリア
pp.33-40
発行日 2021年1月10日
Published Date 2021/1/10
DOI https://doi.org/10.19020/CD.0000001587
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PIVOTAL研究では,鉄欠乏時にだけ補充する消極的補充に比べ,鉄の積極的補充が心不全,心筋梗塞を有意に減らした.その根拠は,致死的心筋症を呈する心筋特異的トランスフェリン受容体ノックアウトマウスの基礎実験に求めることができる.このマウスでは心筋内鉄欠乏が電子伝達系の機能不全を惹起しアデノシン三リン酸の産生障害が起こる.日本では赤血球造血刺激因子製剤(ESA)は必要量が少ないので安全と考える迷信があるが,保存期ダルベポエチンの無作為化研究では,高いHb群において虚血性心疾患が多かった.鉄欠乏が脳梗塞や静脈血栓症のリスクになることはすでに報告されており,血栓塞栓症のリスクのあるESAや低酸素誘導因子(HIF)安定化薬を使う際には,鉄をこれらよりも優先すべきである.
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