- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
1わが国における創傷管理の専門性の高い看護師とは
わが国において専門性の高い看護師とは,文部科学省高等教育局医学教育課が作成した資料 1)によると,特定行為研修修了看護師や診療看護師(nurse practitioner:以下,NP),日本看護協会の資格制度である専門看護師,認定看護師と説明されている。この中で創傷管理を専門とする看護師とは,特定行為研修で「創傷管理関連」を修了した看護師,創傷管理を担う診療看護師,創傷管理に関する系統立てた教育を受けた皮膚・排泄ケア認定看護師(certified nurse in wound, ostomy and continence nursing:以下,WOCN)が該当する。現在,創傷管理における専門的な教育とは,制度上は「特定行為研修」の創傷管理関連区分のカリキュラムとなる。その教育を軸に病院や団体などが指定している特定行為研修指定研修機関で「創傷管理関連」を教育している施設が120施設ほどあり,教育期間は6カ月程度である(取得する区分が多いほど期間は長い)。WOCN研修はこの特定行為研修を含めて,創傷管理や排泄管理,指導・相談などを,より専門的に学べる教育カリキュラムから構成されている。教育機関は4施設あり,教育期間は1年程度となる。NPは,日本NP教育大学院協議会が認定した18大学院が,ほかの特定行為区分や高度の病態判断力および臨床における診断プロセスなどの医学教育を学ぶカリキュラムで,教育期間は2年である。このように,創傷管理の基礎知識を軸に,それぞれの教育機関の付加する教育内容で実践する能力や役割が異なっている(図1)。当然,組織の中で創傷管理をより専門的に行い,医師のタスクシフト・タスクシェアを担う人材に求められる教育基盤は,その役割や期待される能力によって異なる。制度上ではすべて特定行為研修を修了した看護師であるが,その研修の教育ベースはさまざまである。特定行為研修のみを修了した看護師の中にはさらなるキャリアアップを求めて認定看護師教育課程やNP大学院に進む者も少なくない。これは,臨床の役割をさらに拡大するために医学教育を深めるとともに,看護を基盤とした専門的教育を学びたいという熱意の表れである。
2創傷管理を専門とする看護師の実践の成果
褥瘡管理者として専従で創傷ケアを行うWOCNたちは,医療における費用対効果を高め,高度な創傷管理技術が創傷の重症化を防ぐというエビデンスを確立した 2)。日本各地で創傷管理能力を発揮する看護師の存在は,慢性創傷を治療する医師の不足を支援し,今後増加が見込まれる高齢者の慢性創傷の重症化防止に貢献できると期待されている。

Copyright© 2025 KOKUSEIDO CO., LTD. All Rights Reserved.