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はじめに
ご存じのように,耳鼻咽喉科頭頸部外科が扱う領域は,呼吸や摂食・嚥下など生命の維持に欠かすことができない役割と,嗅覚や味覚,音声によるコミュニケーションなどQOLに直結したさまざまな機能を担っています。このため,頭頸部癌の治療ではほかの領域以上に根治性とともにQOLの維持が求められ,1960年代より放射線治療や化学療法,手術を組み合わせたさまざまな集学的治療が開発されてきました。現在では,早期癌に対しては内視鏡や手術支援ロボットを用いた低侵襲手術が,進行癌に対しては放射線治療に白金製剤を同時併用する化学放射線療法(chemoradiotherapy:以下,CRT)が標準治療としての地位を確立し,切除不能な再発・転移に対しては分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬,粒子線治療,癌光免疫療法(photoimmunotherapy:以下,PIT),ホウ素中性子捕捉療法(boron neutron capture therapy:BNCT)など,まったく新しい機序に基づく治療法が保険診療として実施できるようになっています(図1)。しかし,依然としてこれらの治療では根治できないことも多く,世界に類を見ない高齢化社会を迎えたわが国では,臓器機能の低下や重篤な併存疾患によりCRTを実施できない症例も増えてきました。さらに,飲酒や喫煙が主な発症要因である喉頭癌や咽頭癌の患者では,照射野内に重複癌が発生することもまれではありません。こうした症例では,十分な安全域を付けた一塊切除が根治を期待できる唯一の治療法であり,再建外科による機能と形態の再建が欠かせません。本稿では,頭頸部癌の現状と著者らが日ごろ形成外科に支援していただいているさまざまな局面についてご紹介します。

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