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はじめに
メラノーマ診療におけるセンチネルリンパ節生検(sentinel lymph node biopsy:以下,SLNB)やリンパ節郭清術(completion lymph node dissection:以下,CLND)に対する考え方は,近年大きな転換期を迎え,現行の皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第3版改訂に伴い「センチネルリンパ節転移陽性例にリンパ節郭清術を実施しないことを提案する」という推奨文が報告された 2)3)。
ガイドライン作成時のパネル会議では,それまでの常識とはまったく異なる考え方となる推奨文として良いものかと作成委員の間でも戸惑いのある状況だったが,2019年の報告から数年が経過し,その考え方も徐々に浸透してきている。
こうした大きな転換を迎えるきっかけになったのが,複数の国際的な多施設共同前向きランダム化比較試験(randomized control trial:以下,RCT)で,2014年にはSLNBの有用性を検証した国際多施設共同研究(multicenter selective lymphadenectomy trial-Ⅰ:以下,MSLT-I)が報告され 4),SLNBの意義や適応が明確になった。また,2017年には早期CLNDの意義を検証した国際多施設共同研究(multicenter selective lymphadenectomy trial-Ⅱ:以下,MSLT-Ⅱ)が報告され 5),センチネルリンパ節転移陽性例に対する早期CLNDが生命予後を改善するものではなく,リンパ浮腫に代表される有害事象も問題となるとする見解が示された。ドイツでも早期CLNDに関する同様のRCT〔German Dermatologic Cooperative Oncology Group (DeCOG) -SLT trial〕が行われ,6年と比較的という長期的な経過観察においても生存期間の延長が得られなかった 6)。
そのため,NCCNをはじめ欧州やオーストラリアなど世界各国のガイドラインにおいても,CLNDの適応や考え方に大幅な変更が加えられ,特に転移巣の腫瘍量(tumor burden)の少ないSLNB微小転移例ではCLNDは行わないと明示しているものもある 7)。もっとも,MSLT-ⅡやDeCOGでのRCTのSLNB陽性例は,転移巣の腫瘍量が1 mm以下の微小転移例の割合が多く,そのために生命予後に有意差を生じなかった可能性も考えられる。また,国際多施設共同研究が欧米における研究となるため,末端黒子型の割合が半数を占めるなど病型がまったく異なるわが国において,欧米主体の臨床研究に基づいたエビデンスをそのまま受け入れることの是非については,今後の検討課題とされてきた 2)。
その後も大規模なコホート研究 8)やメタ解析 9)などが報告されているが,SLNB陽性例への早期CLND生命予後の改善には寄与したとする報告は認めていない 10)。臨床型の近いアジア圏からの報告でも,わが国からは松井らが3割の末端黒子型を含む59症例の後ろ向き研究 11),中国からは6割の末端黒子型を含む130症例の後ろ向きコホート研究の報告があり 12),早期CLNDの生命予後延長に対する効果は認めなかったとしている。
一方,台湾からは7割の末端黒子型を含む227症例のコホート研究において,早期CLND群により有意な生命予後の改善が得られたとしており 13),末端黒子型の多さやSLNB陽性例の原発巣の重症度(平均TTが3.49 mm)の関与を指摘している。
SLNBや早期CLNDに対する新たな考え方が徐々に定着しつつあるなか,わが国をはじめ東アジア諸国における高いエビデンスの構築が今後大きな意義をもつものと思われ,おのおのの手技についての確実な取り組みがより一層重要になっている。
The approach to sentinel lymph node biopsy (SLNB) and completion lymph node dissection (CLND) in melanoma treatment has changed significantly in recent years. With the revision of the current Clinical Practice Guidelines for Skin Malignant Tumors, 3rd Edition, “not performing CLND for patients with positive sentinel lymph node metastasis” is recommended. This change was prompted by several large-scale international multicenter prospective randomized controlled trials that have led to major updates in guidelines concerning skin malignant tumors worldwide. As new perspectives on SLNB and early CLND gradually take hold, it has become increasingly important to have a solid understanding of the practical aspects of SLNB and CLND in melanoma care. This article aims to provide an in-depth discussion of these procedures, categorized by anatomical site, while introducing the latest reports and findings on each related technique.
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