特集 女性のライフステージを “支える” 医療―性差をふまえた実践マネジメント
各論:産婦人科医ができる女性を “支える” マネジメント
3.妊娠高血圧症候群(HDP)と将来の女性の健康
渡辺 員支
1
K. Watanabe
1
1愛知医科大学産婦人科学講座(教授)
pp.849-854
発行日 2026年9月1日
Published Date 2026/9/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000003939
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妊娠高血圧症候群(HDP)は,妊娠中に高血圧を呈する産科特有の疾患であり,重症化すると脳血管障害や肝・腎機能障害などの多臓器障害をきたし,妊産婦死亡の主要な原因の1つとなる。また,胎児発育不全,早産,胎児死亡などの周産期予後とも深く関連する。一方,多くの症例では分娩後に高血圧や蛋白尿,臓器障害が改善することから,これまでHDPは妊娠に伴う一過性の病態として捉えられてきた。
しかし近年,HDP既往女性では血管内皮機能障害や慢性炎症,インスリン抵抗性などが産後も持続し,高血圧,糖尿病,脳・心血管疾患,慢性腎臓病(CKD)などの発症リスクが高いことが明らかとなっている。このため,HDPは妊娠中のみの疾患ではなく,女性の将来的な心腎代謝疾患リスクを示す重要なライフイベントとして認識されるようになった。
こうした背景から,HDP既往女性に対しては,妊娠中の管理に加え,分娩後も生活習慣改善支援や定期的な健康管理を継続することが重要である。適切な食事・運動療法,体重管理,禁煙支援に加え,血圧,腎機能および代謝指標を定期的に評価することで,将来の心血管疾患やCKDの発症リスク低減が期待される。
本稿では,HDP既往女性における将来の生活習慣病,特に心血管疾患およびCKDを中心とした健康リスクと,その予防に向けた生活習慣改善支援ならびにライフコースを見据えた長期的な健康管理の重要性について概説する。

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